確率 [2004/09/01] |
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よく病気で手術する前に「助かる確率はどれくらいありますか?」と聞かれます。飼い主さんにとってみればとても知りたいことだと思いますが、同じ病気でも、年齢、ワンちゃんの性質、合併症の有無などにより大きく左右されます。私は個人的には助かるかどうかを数字で出すことはしません。でも例えば手術が必要な場合、手術するかしないか飼い主さんが迷う場合があって、そのときは自分の経験上の数値で話をします。
例えばガンの場合、手術をしたり、抗がん剤を使用したりすれば、あとどれくらい長生きできる、と言うのは確率で話をする必要があります。私どもが治療する方法は、海外の獣医さんや、国内の獣医さんが行った方法を参考にします。それらの文献に、こういう治療をたくさんのワンちゃんに行ったらこれくらい生存した、と記載されていて、同じような治療をすれば、その数値が基準になります、とそのままを飼い主さんに伝えます。
手術の場合、治る確率が30%だろうが50%だろうが、正直やってみないとわからないと言うのが実際です。結果はもちろん大切ですが、あとで後悔しないよう、治すための努力をすることではないでしょうか。
先日こんな例がありました。
7ヶ月前より腹腔内にできものがあるのがわかっていたワンちゃんが、貧血で来院されました。輸血して症状は完全ではないものの回復してきました。経過が長いことと症状、検査結果からして脾臓の良性の腫瘤が疑われました。脾臓の腫瘍のうち30〜60%は悪性腫瘍で、悪性の場合平均19日で死亡します。飼い主さんにはリスクは高いですが、助けるには手術しかないことを強くお勧めしましたが、見た目が元気出てきたので、なかなか手術に踏み切ることができませんでした。
結局飼い主さんが手術する心構えを持つことができて、翌々日に手術を控えた日、急に倒れて来院されました。予想からすると、脾臓にできた腫瘤が破裂して大量に出血し、急に貧血を起こしたのだろう、と考えられます。再び輸血して状態がよくなってから手術し、無事に手術も乗り切り、元気に退院していきました。腫瘤の検査結果は良性の腫瘍で術後の経過も良好でした。一時はどうなるかと思いましたが、結果的には手術してよかった症例です。
病気を治すにはいろんなハードルがあります。難なく飛び越えることができることもあれば、つまずいて転ぶこともあります。でも最後には「やるだけやってよかった」と言えるようにしたいですね。 |
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